2025年03月10日 脊柱管狭窄症について
今回は腰部脊柱管狭窄症についてのお話です。一度は聞いたことがある名前だと思います。
「散歩すると足がしびれてしゃがみ込んでしまう」「だけど、スーパーマーケットのカートを押せば歩ける」
このようなことを自覚したり、お知り合いの方で話される方はいないでしょうか?
もしかしたら、腰部脊柱管狭窄症かもしれません。
ある大規模研究では、高齢者の10人に1人が腰部脊柱管狭窄症であり、患者数は580万人と推定されています¹。また70歳以上の高齢者では2人に1人が腰部脊柱管狭窄症を患っているようです²。
腰部脊柱管狭窄症の原因は「腰椎において脊柱管、神経根あるいは椎間孔が狭窄するために馬尾や神経根が障害されて様々な症状を呈する」とされています³。
その脊柱管を狭窄する原因は先天性、発育性、後天性に分けられます。後天性に絞りますと、大きく分けて5種類あります。⁴
・椎体の変形(骨棘形成)、椎間関節の変形→変形性脊椎症、脊椎圧迫骨折
・椎間板の変形→椎間板ヘルニア、椎間板膨隆
・靭帯の肥厚→後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症
・椎体のズレ→脊椎すべり症、脊椎分離症
・腰椎の側弯→脊椎側弯症
他にも手術後性、腫瘍性などもあります。
このように様々な原因で脊柱管や神経根を圧迫する可能性があります。
脊柱管狭窄症の定義は「脊柱管狭窄症は脊柱管の続発性退行変化に伴い神経組織と血管のスペースが減少する状態と定義.症候性の場合,腰痛はあってもなくても良いが,殿部痛,下肢痛や疲労感が見られる可変的な症候群.」 「特徴は,関与する因子によって症状が増悪したり、軽快すること.歩行のような直立での運動や特定の体位により神経性跛行が惹起.また,前屈位や座位の保持,あるいは安静臥床時には症状が軽減することが多い.」⁵とされてます。
腰部脊柱管狭窄症の診断基準は
1.殿部から下肢の疼痛やしびれを有する
2.殿部から下肢の疼痛やしびれは立位や歩行の持続によって
出現あるいは悪化し、前屈や座位保持で軽快する
3.腰痛の有無は問わない
4.MRIなどの画像で脊柱管や椎間孔の変性狭窄状態が確認され、
臨床所見を説明できる
以上の4項目をすべて満たすこと⁶
とされています。まとめると、
「画像で説明しうる間欠跛行を伴う殿部から下肢の疼痛またはしびれ感」となります。
特に腰部脊柱管狭窄症の特徴は、上記の2.で、間欠(性)跛行と呼びます。
間欠跛行は「歩行により下肢の疼痛 ・しびれ・ 脱力が出現,あるいは増強し,歩行困難になる.しばらく休息すると症状は消失あるいは減弱し歩行可能となるが, また歩行すると同様の症状が出現する現象」⁷とされております。
腰部脊柱管狭窄症と類似した疾患があるため、鑑別が難しいのですが参考書に診断のアルゴリズムが紹介されていましたので下に記載します。⁸
ABIは血管のつまりをみるもので、当院で検査できます。
腰部脊柱管狭窄症は、基本的には保存的治療となります。
- 薬物療法、②神経ブロック療法、③装具療法、④運動療法があります。
④の運動療法を5つ紹介⁴いたします。
それでも症状の改善が難しいのであれば手術療法の選択⁴となります。
- 足に麻痺や筋力低下がある(つま先が上がらない下垂足や膝を伸ばせないなど)
- 排尿排便障害がある(排尿困難・残尿感・頻尿・尿漏れ・便秘など)
- 重度の間欠跛行(10~20mも続けて歩けない)
日常生活に著しい支障をきたし手術を希望される場合となっています。
[引用・参考]
1.Ishimoto Y,et al :Prevalence of symptomatic lumbar spinal stenosis and its association with physical performance in a population-based cohort in Japan: the Wakayama Spine Study. Osteoarthritis Cartilage 2012;20:1103-1108.
2.石元優々 吉田宗人 日本医事新報 (4835) 26-29,2016
3.公益社団法人 日本理学療法士協会(監):理学療法ガイドライン,第2版,2021
4.脊柱管狭窄症 自力で克服!1分体操大全.文響社,2021
- North American Spine Society Evidence-based clinical guidelines for multidisciplinary spine care: diagnosis and treatment of degenerative lumbar spinal stenosis [Internet]. 2011.
6.日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会:腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン,改訂第2版,2021
7.日本脊椎脊髄病学会(編):脊椎脊髄病用語辞典,第4版.南江堂,2010
8.脊椎脊髄・神経筋の神経症候学の基本-日常診療での誤診を防ぐ初めの一歩.三輪書店,2023
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